2016.02.23

リーバイス®を愛する識者が語り合う、デニムカルチャーの行方。

5ポケットパンツのオリジンであるリーバイス®。タフなワークウエアとしてワーカーたちから愛された一方で、戦後はファッションウエアとして様々なカルチャーを生み出してきた。例えば1950年代のロッカーズカルチャーでは、アウトローなバイク乗りたちがこぞって穿き、1960年代のアイビーブームでは良家の学生たちを夢中にさせ、1970年代のフラワームーブメントでは、反戦を唱えるヒッピーと呼ばれる若者たちがジーンズとともに自由を叫んだ。そして現在は多種多様化し、様々なシーンでデニムが愛されている。そんなデニムカルチャーのこれからを、旧知の仲であり、深くデニムを知るアーカイブ&スタイルの坂田真彦氏とリーバイス® ビンテージ クロージングの大坪洋介氏の2人がディープに語り合う。

Photo_Kazumasa Takeuchi | Text_Shuhei Sato | Edit_Issey Enomoto

右:坂田真彦/アーカイブ&スタイル代表

1970年生まれ。数々の人気ブランドのディレクションを務める一方で、2006年から13年までビンテージショップ『アーカイブ&スタイル』のオーナーを務めるなど、大の古着好きとしても有名である。

左:大坪洋介/リーバイス® ビンテージ クロージング セールス&マーケティング ディレクター

1956年生まれ。1970年代末よりアメリカへ渡り、数々の人気ブランドに携わった後、リーバイス®のプレミアム部門の立ち上げに参画。現在はアジア、中東、アフリカのセールスとマーケティングを統括している。

 

ウエストが30の人でも、すべて30で揃える必要はない(大坪)

——まず、改めてお聞きしますが、おふたりにとってジーンズの魅力とはどういうところにあるんでしょうか?

坂田「やっぱりジーンズの魅力は穿き方ですよね。カスタマイズした独自のシルエットを穿くのもおもしろいし、学ランとか制服の着こなしじゃないですが、みんなと同じものでも着こなしひとつで差を出せるのが、非常に奥が深いというか」

大坪「まさにおっしゃる通り。リーバイス®ではひと口に501®と言っても、リーバイス® ビンテージ クロージングで展開している過去のものから、レッドタブで展開している現代の501® CTまでいろいろとあります。例えばウエストが30の人でも、すべて30で揃える必要はまったくなくて、むしろいろんなサイズで楽しんでほしいですね。そっちの方が絶対に楽しいと思いますよ。個人的には春夏と秋冬で穿きたいジーンズが、それぞれのシルエットによって変わります。トップスのボリュームが変わるので、同じものだとどうしてもバランスが悪くなるんですよね」

坂田「わかります。インディゴのトーンも変えたいし、ブーツとサンダルでも似合う丈が変わりますもんね」

大坪「それを追求していくことが、私にとってのデニムの醍醐味です」

 

’90年代後半の流れと同じ空気を感じる(坂田)

坂田「ちなみに大坪さんが今日穿いているジーンズはなんですか? ちょっと変わっていますね」

大坪「このジーンズは、リーバイス®新宿店にあるテーラーショップでカスタムオーダーしたものなんですよ。ビンテージ クロージングの1966 501®のモデルをさらにグッとテーパードさせています。なのでセルビッジ部分がかなり広くなっていて、ロールアップすると軽いアクセントになるんですよ」

坂田「私も先日、リーバイス®新宿店でカスタムオーダーをさせていただきました」

大坪「ありがとうございます。どのようなものをオーダーされたんですか?」

坂田「大坪さんとベクトルは同じで、ビンテージ クロージングの1933 501®を立体的にテーパードして、ジョッパーズのようなシルエットにお願いしました。実はリーバイス®レッド(※1)がまた気になっていて。今の流れが少し’90年代後半と同じ空気を感じるんです。今はラギッドなスタイルが落ち着いてきて、ノームコアやミニマムといったワードもよく耳にします。アクネのようなシンプルなデニムを好むが人が増えている印象があって。一方で、当時はビンテージが落ち着いて、ヘルムートラングやA.P.Cのようなミニマムなデニムパンツが台頭してきました。そこにリーバイス®レッドが出てきて、同じ作り手として衝撃的でしたね。だからそんなニュアンスを取り入れたデニムが作れないかと考えると、少しオンスの薄いもので、うまくドレープ感を効かせたものに行き着いたんです。あのカスタマイズサービスは素晴らしいと思います。担当してくれた新宿店の山本さんも技術と感性があって素敵ですね」

※1 リーバイス®レッド……1999年にスタートしたコンセプトライン。ビンテージに敬意を払いながらも、立体裁断などを用いて、新たなデニムの可能性を示した。2007年に休止したが、2014年に復活。

大坪「そう、彼女は情熱があって、センスもあるから、今自分が持っているアーカイブを見せて、いろいろと勉強してもらっているんです。坂田さんがおっしゃったリーバイス®レッドは自分も衝撃的でした。その前に同じ衝動を受けたのが、フラワームーブメント全盛期にリリースされたオレンジタブ(※2)。当時オーセンティックなストレートの501®は、少し大人の人たちが穿いて、若者たちはオレンジタブをこぞって穿いていました。そこには進化したスーパースリムの606や646などのベルボトムもあって、その自由な発想がリーバイス®レッドに通ずるものを感じます。もちろん気持ちがノームコアな方向に行くのも理解できますけどね」

※2 オレンジタブ……アイコンのレッドタブがオレンジになったラインで1973年にスタート。ファッションに特化したレーベルで、スリムの606やベルボトムの646などが代表作。

 

“何を着るか”よりも“どう着こなすか”が大切な時代(大坪)

——なるほど、ノームコアでは物足りない層も確実にいますよね。デニムの次のステージとしては、カスタマイズという方向にいっているでしょうか?

大坪「今の時代は、なにを選ぶかというより、どう着こなすかが大切な時代になったのかなと。例えば、リーバイス®のビンテージでタイプ1のデニムジャケット(506XX)にセパレートと呼ばれる仕様があるんです。セルビッジデニムは横幅に限りがありますから、極端に大きなサイズは、背中の真ん中で接がないと作れない。昔は人気がなかったのですが、近年はこの仕様が高騰しているのも、デニムジャケットをオーバーサイズで着こなす人が増えたからだと思いますね。実はタイプ2(507XX)にもセパレート仕様があり、昨年やっと見つけました」

坂田「オーバーサイズで着たい時もあれば、ジャストサイズで合わせたい時もありますよね。ジャケットだけでなく、丈のバランスでもまったく見栄えが変わってくるのが、ジーンズのおもしろいところ。ちょっと前までは501Eをジャストサイズで穿いていたのですが、最近は太めやオーバーサイズ気味なのが気分です」

大坪「坂田さん、これを見てください。最近、カスタマイズした中でも特に気に入っている1本なんです」

坂田「お〜、これはおもしろいですね」

大坪「これは1890年モデルで、ワークウエアとして作られていたのでかなり太めのストレートなのですが、後ろで生地を取ったデザインタック、そしてシルエットをテーパードさせました。イメージは、短いジョッパーズのようなシルエットに仕上げてもらいました」

常にカルチャーを発信してきたのが、リーバイス®と他社の違い(坂田)

坂田「先ほどオレンジタブの話が出ましたけど、リーバイス®が他社メーカーと違うのが、カルチャーを発信してきたことだと個人的に思います。今はどんな取り組みをされているんでしょうか」

大坪「大きく分けると2つありまして、まずは自身が担当しているリーバイス® ビンテージ クロージング。私がリーバイス®に入社した7年前に今の体制でスタートしました。それまではアメリカ、日本、ヨーロッパで各々の企画があったのですが、これを機に一本化したんです。この企画はリーバイス®のアーカイブを再検証し、歴史を紐解いていくことがコンセプトです。その一方でうちの会社の方針はイノベーティブなので、エッジなものも常に提案したいと思っています」

 

サイズひとつで差を出せることを、もっと伝えていきたい(大坪)

——前に坂田さんが「501®の魅力は、何度もマイナーチェンジをして常に時代のスタンダードでいたこと」だとおっしゃっていました。そんな進化を続けてきたリーバイス®ですが、今のリーバイス®におけるスタンダードは、どのモデルになるのでしょうか?

大坪「一概に言うのは難しいですが、やはり501® CTですかね。CTとはカスタマイズド&テーパードの略称。王道の501®オリジナルの裾をテーパードしていて、時代の声を反映したネクストアイコンです。先ほどの着こなしの話に繋がってくるのですが、いつものサイズより1〜2インチ下げてスリムに穿きこなすダウンサイズ、スタンダードに穿けるジャストのトゥルートゥサイズ、リラックスした印象になる1〜2インチ大きめのアップサイズという3つの着こなしの提案を行っています。同じ501® CTでも、サイズひとつで自分を表現することができるわけです。ファッションの根本は、身に付けることで気分が高揚したり、自信を持てることだと思いますから、スタンダードなものでも自分らしさを出すことが大切ですよね」

坂田「今日聞いているだけでも、リーバイス® ビンテージ クロージングがあって、リーバイス® レッドがあって、501® CTもある。リーバイス®の魅力って、引き出しの多さにあると思います。’60年代にはピケのパンツなどのキャンパスウエアがあって、’70年代にはヒッピー的なテイストを匂わせるオレンジタブがあったように、常にスタンダードと革新的なものを兼ね備えていますよね」

大坪「ありがとうございます。リーバイス®って数々の名作を出しているのですが、デザイナーの名前を謳うことがないんです。だからパリやミラノなどのファッションカルチャーとまったく違う立ち位置にあって、あくまでもカジュアルウエア、デイリーウエアにこだわってきました。これからもおもしろい仕掛けをしていきますので、どうぞご期待ください」

リーバイ・ストラウス ジャパン

levi.jp