2022.05.09

5270T-010 Titanium

Patek Philippe が次なる 仕掛けをしてきました。11月のPHILLIPS のチャリティ・オークションにチタン製のRef.5270T が出品される事に。これはもちろん特別に作られたユニーク・ピースでエメラルドグリーン文字盤になります。

パテックは チタン製モデルは市販モデルでは作っておらず、過去にチャリティーオークションのためだけにワンオフのモデルをいくつか作っており、その度に高い注目を集めてきました。今回 チタン製のユニークピースを作るにあたって、そのベースをノーチラスやアクアノートではなく、人気が低迷気味だった Ref.5270 を選択した事には大きな戦略が込められてると思います。

IMG_6678Ref.5270T-010

このところアクアノートやノーチラスなどのスポーツモデルが異常な高騰を見せる一方で、かつては人気モデルだった永久カレンダークロノグラフ系(現行5270, 5970, 5004など)のモデルは非常に弱い相場が続いておりました。そこで人気復興を狙う5270でチタンモデルを作り、しかもエメラルドグリーンのスペシャル文字盤で勝負をかけてきたのでしょう。チタン製のパテックという事実だけでも 今回の5270Tは間違いなく100%高騰するので、それにつられて5270Pなどのコンプリケーション系の市場価値を高騰させようという思惑が透けて見えます。

おそらく 今回の出品の話が関係者には早くから情報が回っていた事でしょう。実際のところ、この発表に前後して 5970/5004 の落札価格は2倍近くに高騰しており、せいぜい13万ドルで売られていた普通の5970Gが、昨日のオークションでは27万CHFと2倍近くになっています。これらは出来レース的側面もありますが、好意的に解釈するなら「PATEK本体 や オークションハウス、トップディーラー達の意向(=次の流行は永久カレンダークロノ系)を受けて、マーケット全体が意向に沿って動いた」と言う感じなのでしょう。

スクリーンショット 2022-05-09 17.45.00Ref.5270T-010

時計界にはこのように、一見「出来レース」に見えるようなことが 時に起こります。値段の釣り上げと言うか、価格操作に見えるような流れですね。オークションはわざと高く落札したりと演出(もちろん実際に高額を払う事になるので相応のリスクはある)が可能な世界ですし。ですが、仮にそのような動きがあっても、その時計に実力(つまりデザイン、機能などの時計本来のポテンシャルとしての魅力ですね)が無ければマーケットはついてきませんので、そのキッカケで高騰するならば 「その時計には魅力があった」と言うことなのでしょう。ただし  5711Tiffany に続いて 今回のこの 5270T グリーン。パテック社が PHILLIPS に 擦り寄っている(=利用してるとも言えるが)印象も否めませんが。

Ref.5270と言えば、同じモデルの中で文字盤のデザインを何度も変更した経緯があるのですが、実際の今回のチタンモデルのアピアランスは 2022年の新作の Ref.5270P(1st文字盤のデザインに戻したグリーンダイアル)と同じ文字盤と針を使用して、色目を少し変えて ケースをチタンにしたモデルという感じでしょうか。今回の5270T が数億円の値段がつけば、ほとんど見た目が同じ5270P が高騰するのは自然の流れ。おそらく正規ディーラーには、11月より前に5270Pを手に入れようと考える顧客からの電話 が殺到している事でしょう。

スクリーンショット 2022-05-09 11.55.46Ref.5270 文字盤の推移(左から1st, 2nd, 3rd):1stモデルは発表当初 人気が出ず、徐々に旧モデル(5970または2499)に寄せて行った感があります。ただし今見ると1st のシンプルさが際立っている印象も。

スクリーンショット 2022-05-09 11.22.26Ref.5270T-010:上記の1st文字盤に近いデザインだが 針やインダイアルのフォントは変更されています。

スクリーンショット 2022-05-09 12.35.56Ref.5270P:今回のチタンモデルのデザイン的ベースとなったプラチナのカタログ・モデル。グリーンの色目はチタンモデルとは異なりますが その他デザインは同じ。

Keywords:
Patek Philippe