Nautilus fever
ここ数年のパテックのステンレスのスポーツモデル(主にノーチラスとアクアノート)の高騰に関するHODINKEE の記事。
ノーチラスとアクアノートは本来はパテックのラインナップの中ではエントリーモデルの役割で、これらのモデルの購入を経て、ゴールドやプラチナの上位モデルに顧客を誘導するというポジションなのですが、ここ数年は異常な高騰(例えば定価30,000ドルのRef.5711/1A が、セカンダリ市場では80,000ドルで売られている状況)を見せています。
Ref.5711/1A 最もベーシックなスティール製ノーチラス。
この状況において、当然ながら各国の正規ディーラーや顧客からは「ノーチラスやアクアノートの割り当てが需要に対して少なすぎる」と不満の声が出ていますが、パテックのCEO ティエリー・スターン のインタビューによると、ノーティラスやアクアノートをこれ以上増産する気は無さそう。ティエリーの考えではスティール製のモデルはパテックの全生産量(年間6万2,000個)の25-30%以内に抑えるべきであると。これは女性用のTwenty4も含めての数字だから、その中のノーチラスとアクアノートのみに限ればその個数は相当に少なく設定してるのだとか。
パテックはあくまでメインはゴールドやプラチナ製の高級時計を作るブランドであるというイメージを守っていきたいようですね。「もし明日ノーチラスを4万個作る決定をしたら、全ては終わるだろう」とも発言しています。
Ref.5740 perpetual calendar搭載 のWGモデル
さらに正規ディーラーの数も1/3くらいに減らしていく方針で、事実 アメリカでは160から100まで減らしたのだとか。ただそれでも、各店舗にノーチラスは年に数本でも入れば良い方で、すでに8年待ちとも言われています。デイトナも恐らく似たような状況でしょう。
ただこの辺りは非常に難しい問題で、パテックに限らずどのブランドも「ベーシックなスティール製のスポーツモデル(ROLEXで言えば デイトナ や GMT)だけに人気が集中している」という状況は全く同じ。その理由は明らかで、ファッションのカジュアル化という事につきるでしょう。どのブランドも「それらの人気モデルを増産すれば瞬間的には儲かるが、価格が暴落してブランドイメージが毀損する」というジレンマの中で、供給数を絞っているというのが本当のところなのでしょう。
Ref.5164A スティール製アクアノートも同じような状況。
どんな製品でも「人気があるから、欲しくなる」という部分は否定できないので、これからも一部のスポーツモデルだけが高騰する現象は続くでしょう。正確に言えば、これにはヴィンテージの時計が高騰するのとは、少し違ったメカニズムがあるのですが、結果的にコレクター側から見れば、大きな違いは無いのかもしれません。なぜなら結局のところコレクターは「高くても、欲しければ買うしかない」のですから。
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- Patek Philippe