1997年に「初の水冷ポルシェ」として登場した ポルシェ 996 ですが、そのデザインが決定する過程で ベルトーネ（イタリアの名門カロッツエリア）からもデザインスタディが提案されていたというお話。当時の流れとしては Boxster(986) と新911(996) をコンポーネントを共有しつつ製造するという計画でしたから、当然ベルトーネ案も 996/986 の両方セットでデザインが提案されています。

ベルトーネ案の996 は 911というより、リアセクションやフロント周りもフェラーリのような雰囲気があって、今見たら非常に興味深いですね。こういった採用されなかったデザイン案（それも1/1のプロトタイプ）は公開されない事がほとんどですので、貴重な画像だと思います。

1992年の写真。左が964、真ん中がベルトーネ案996。そして右がベルトーネ案のBoxster(986)。こうみると…やはり964が 凝縮感があって美しく見えてしまいます。1992年と言えば964の最後の頃の年。993が出るまえにすでに996 の1/1 の試作車が出来上がってるんですね。

同じく92年12月14日の写真。ベルトーネ 996 を正面から。全体のシルエットはフェラーリルックでも、この角度で見るとやはり911という感じ。このヘッドライトの形状は のちに正式採用されたポルシェの案にも大きく影響を与えたと思われます。

逆方向から。 L)ベルトーネ996、R)ベルトーネBoxster(986)。996のCピラー付近はフェラーリの456にも似た雰囲気があります。

ベルトーネ996：リアのデザインも現在の911のイメージからするとかなり違和感はありますね。

ベルトーネBoxster (986) リアはかなりスッキリしたデザイン。

ベルトーネBoxster(986)  インテリアは964のものを流用しているように見えます。

これを見ると 996/986 の組み合わせとして、 他にも多くのパターンのデザインが提案されているのがわかりますね。一番左のスケッチあたりを見ると ポルシェというより 360モデナ のような雰囲気があります。この辺りのデザインも 現代のスポーツカーのように全幅が 1,980mmとかだったなら、良いデザインだったんだと思います。

もちろん ご存知の通り、このベルトーネ案は採用に至りませんでした。実際に採用されたデザインを見ると やはりこちらの方がポルシェのDNAを引き継いでいて、商業的には 妥当な判断だったのでしょう（それでも後年に酷評される事になった訳ですが…）。それでも、こうやって振り返ると ベルトーネ案の影響もゼロでは無かったのかな、とも思います。

1997年に発表された 996

1996年に発表された Boxster(986)

ただ、こう見ると…完全にヘッドライトはベルトーネ案のアイデアをベースに発展させた感じですね。最終デザインの涙目ヘッドライトを見るとその中に大きい円形灯を内包しているところなんかは、そのままですし。こういう場合、部分的にアイデアを採用して お金を払ったりすることはあるんでしょうかね。