BMW 7er
さてここのところ、賛否両論のあるBMWのデザイン。その論争の対象はもちろん「あまりにも巨大化したキドニーグリル」でしょう。
かつてBMWはどちらかといえば「知性あるスポーツ テイスト」という印象のデザインでした。走り屋的なわざとらしい方向性ではなく、あくまで上品さの中に感じるスポーツテイストというか。
1986 BMW750i (E32)
1986年発表の7シリーズのキドニーグリルの中は縦ルーバーで、その両側には横方向のルーバーという巧みな構成。あくまでデザインとしてのグリルは中央のキドニー部分のみですが、実はフロント全面がルーバー状でエアスリットの役目を果たしています。それが視覚的にも一目でわかる見事なデザインでしたね。全体的にはワイド&ローのシルエット(ボンネットをメルセデスに比べてかなり低く設定)でありながら、ボンネットそのものには起伏も少なく非常に抑制の効いたデザイン。下品さを全く感じさせない上質なスポーツセダンという感じでした。
2019 BMW750Li (G12)
先だって発表された最新の750i。かつてないほど巨大化したキドニーグリルはもはや機能性というよりはブランディングで、「デザインのためのデザイン」という印象。現代の自動車販売戦争を生き抜くためにはこの大きさが必要という判断が下されたとも言えますね。もちろんかつてキドニーグリルは縦長の長方形からスタートしたから(ロールスの最新のファントムと同じく)そこへの原点回帰という必然性もあったのだとは思いますが、それにしても…という大きさ。
ただBMWも、今回のデザインが持つアグリーな側面は十分承知していながら、敢えてこの方向で勝負してるのでしょう。同時に発表された高級SUVの X7 についても相当にグリルを大きくしてきましたし、ハイエンドなモデルについて、当面はこれで行くのだと思われます。どちらかといえば車高が高いX7の方が巨大グリルの違和感は少ないですね。
こういうデザインは時間の経過と共に、受け入れられていくという側面もあるので、マーケットに今後どう迎えられるかが、非常に注目されるところだと思います。
- Keywords:
- Sedan