TAYCAN
いわゆるテスラ・ショック以降、ポルシェは電気の時代の到来を確信し、早くからEV専用ポルシェの開発に大きな投資をしてきました。例のようにポルシェが開発に長すぎる時間をかけるあいだに、BMWはi3 を発売したものの攻めたデザインで商業的には苦戦。メルセデスは長いあいだ、テスラの成功からは目を背けてきましたが、ここにきてクロスオーバーのデザインで「EQC400」を発表したものの、期待したほど大きな話題になっていない印象。
ポルシェは開発に時間を掛けたせいで、最も後発になった訳ですが、時計の針が偶然シンクロしたと言うのか、結果的に最も良いタイミングで発売できる気がします。テスラがここに来て最も期待されていた model3 の生産の問題で失速。EVにそろそろ乗りたいと思っていた層が行き場を失っていたところでしたし。ポルシェ製であれば古典的車好きのEVへの拒否反応も薄まるというもの。
そんな2019年から量産が開始されるポルシェのEVの「TAYCAN」の最初のコンセプトカーは、2015年にフランクフルトで発表された「Mission E」でした。この時のボディデザインは4つの大きなオーバーフェンダーを持つ量産車からは大きくかけ離れたデザインでしたね。
そして次に見せたのが3年後の2018年の「Mission E Cross Turismo」でした。これはMission E のワゴンタイプというコンセプトですが、大事なのはそこではなく、実は周到に一気に普通っぽいデザインに戻しているところです。
これはポルシェの巧みな戦略でした。もはやオーバーフェンダーは何処へやら、大げさに言えば「顔だけ変えたパナメーラ」と言えなくもないデザインに密かに変化させていたのです。
この辺りはポルシェは非常に上手したね。あの奇抜な「Mission E」を3年間も見せられて来たので、この2回目のデザインは非常に常識的に見えたことでしょう。この変わったヘッドライトのデザインを難なく受け入れさせました。
さらに量産型で一気に時代にアップデートかつ修正を入れてくるでしょうから、市販型のデザインが受け入れられるのはもはや間違いないでしょう。マーケット的に言えば、テスラが作り上げた地盤をポルシェが利用する形と言えるかもしれません。あとはどんな走りのコンセプトでどの価格帯で売ってくるのか、そこさえ間違えなければ「TAYCAN」は、本当の意味で初めて受け入れられる高級EVとなるのでは無いでしょうか。
とは言えこれは、パナメーラとカイエンの売上が落ちるという諸刃の剣である事はポルシェは百も承知でしょう。いつの時代も革命には多少の犠牲はつきものだと。