2019.08.05

”色と形”で生むノスタルジック彫刻 NY発アーティストJosh Sperlingとは

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Photo: Kei Okano Courtesy of Josh Sperling and Perrotin

色彩豊かなスカルプチャーが六本木のPERROTIN TOKYO(ペロタン東京)の壁一面を埋め尽くす。「一つとして同じ色は使っていないんだ」と作品を紹介するのは、NYを拠点に活動するアーティストJosh Sperling(ジョシュ・スパーリング)だ。近年注目を浴びる若手アーティストである彼の日本初となる個展「Summertime(サマータイム)」が、8月10日まで開催されている。

 2つのスペースを使った2部構成となる同展。1つ目のスペースはギャラリーの外からもガラス窓越しに鑑賞可能な空間を生かし、壁面の隅々に多様な”スクイグル(くねっ た線)”を配置した。2つ目のスペースではシェイプドとカラー・キャンバスを融合させた“コンポジット(複合)”パネルを壁面に整列。いずれの作品もグラフィックデザインのソフトウェアを用いて形状を作り、ハイテク自動ルータによって合板から完璧な形状を創り出す。それにキャンバスを張り、手作業で色付けされ仕上げている。

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Photo: Kei Okano Courtesy of Josh Sperling and Perrotin

 「父は美術教師、叔父が作家ということもあり、自分がアーティストになるというのも自然な流れでした。父がペンや絵の具を与えてくれたので、物心ついた頃には絵を描くことが当たり前のことでした」と幼少期を振り返るJoshは、1984年にアメリカ・ニューヨーク州オネオンタで生まれた。大学で彫刻・陶芸を専攻したことが出発点となり、「大学卒業後、彫刻を存分に作れる施設が使えなくなり、絵画に移行したのですが、同じ場所に座り描き続ける作業に楽しさを見出せなかった。もっと身体的な動きを作品として表現したかったんです」と”絵画と立体の中間地点”のようだと語る現在の作風へと辿り着いた。

 しなやかな曲線やパズルのような構図によって仕上がる立体作品をさらに印象付けるのが、彼の配色だ。60年代~70年代のミニマルアートや家具デザイン、80年代のMemphis Group(メンフィス・グループ)が手掛けた作品群、20世紀中期から後期のコミックやカートゥーンなどに着想しているという色はどこか懐かしさを感じさせる。その独特のニュアンスは絵の具を手で混ぜ合わせて作られ、色のレシピとして彼は膨大なバリエーションをストックしているという。そこから形を見て色を当てていくという作業を行う。「色から感情を感じるように、形からもそれぞれ感情を感じられるじゃないですか。形容詞的なものがあり、そこからイメージに沿った色が浮かぶというように。連想ゲームのようです」。

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Photo: Kei Okano Courtesy of Josh Sperling and Perrotin

 KAWS STUDIO(カウズ スタジオ)で経験後、2016年にデビューして今年で3年。1人でスタートした作品制作も現在は5人のチームで行えるほどになり、個展を度々開催するなど「トントン拍子でここまできた」と飛躍してきた。「いつも会場に合わせて作品を構成してきたが、スケール感に興味がある。また、動的な形を使っているが、展示方法による視覚的変化にも興味がある。近い将来、一旦スローダウンしてそういった実験的なことに挑戦したいと考えています」と展望を語っている。

■Summertime
会期:7月3日〜8月10日
時間:11:00~19:00
定休日:日・月・祝祭日
場所:PERROTIN TOKYO
東京都港区六本木6-6-9
入場料:無料

Keywords:
Sculpture