老舗メゾンの“ヘリテージ”とコラボレーションするうえで、藤原ヒロシ「BVLGARI X FRGMT」を語る
この、稀代のコラボレーションに意表を突かれた人も少なくないだろう。創業から135年という歴史を持つラグジュアリーの粋を集めたブルガリと、ストリートとモードを往来するコラボの妙手である藤原ヒロシが手を取ったカプセルコレクション「BVLGARI X FRGMT」が、6月5日(水)から始まるポップアップストアを皮切りについに世に送り出される。「たしかに、これまでラグジュアリーブランドとコラボレーションしてきましたが、女性向けの高級宝飾品を中心に扱うブルガリは特に自分と対極にある存在だし、僕たちから遠い位置にあるものだと思っていました。だからこそ良い意味で“アンバランス”なものができると確信できたのでオファーをお受けしたんです」と語る藤原に、これまでのブルガリにはない新鮮なデザインに影響を与えたものについて話を訊いた。
Photo_photomaker|Text&Edit_Tatsuya Yamaguchi
――これまで手がけてこられたものはご自身が身に付けたいという視点が一貫していたように思うので、ウィメンズが軸になる今回は普段とはまた異なる発想だったのではないでしょうか?
そうですね。全然違うから、逆に面白いアプローチができて良かったというのはあるかもしれません。最初に声をかけてもらったときは女性向けだということを知らなかったんですよ。初めての打ち合わせでそう言われて、『あ、そうなんだ』って驚きましたね(笑)。単に女性向けのものを自分では持たないから感覚としてわからない部分も多く、そこも含めて全体的にチャレンジでした。
――デザインするうえで難しさを感じたシーンはありましたか?
それはないですね。むしろ難しいと思ったら違う方向性を見出すタイプですし、そこで粘っても仕方がない。ブルガリのデザインチームが僕のことをすごくよく理解してくれていたので、対話を通してお互いに歩み寄ることができた。だから、とても“ブルガリらしい”もののなかに僕の要素がたしかに入っているという具合に仕上がっていると思っています。
――オファーから約1年。国内外で打ち合わせを何度も重ね、フィレンツェにあるアトリエにも足を運ばれたそうですが、印象的だったことはありましたか?
ものの作り方でしょうか。クオリティに対する譲らない姿勢とクラフトマンシップの凄さに驚きましたね。ブルガリのバッグって一見すると本当にカチッとしているので機械で作られているようなイメージさえあるんですが、クロコダイルのなめしからハンドステッチ、適切な強度と立体感を出す作業までのほとんどを手で行なっている。他のメゾンもそうなのかもしれないけど、僕は今まで目にしたことがなかった衝撃的なアナログ感がありましたね。
――そうしたアナログの蓄積がシンボリックなバッグに結集している。きっと情熱的な手仕事なんでしょうね。
そうですね(笑)。途方に暮れるほどの仕事量だし、今でもここまで徹底しているのは本当に貴重だと思いましたね。
――1940年代に誕生してからブルガリの象徴である「セルペンティ(蛇)」コレクションから選ばれた3型のバッグ。クロージャーにある蛇のモチーフの額にはサンダーボルトのロゴがあしらわれていて、今回のシンボルのひとつになっています。ブルガリにとっての「蛇」とは何かといったヒアリングはされたのですか?
第一に、「セルペンティ」のシリーズで蛇のモチーフを使って欲しいという要望があったんです。ヨーロッパではセンシュアルのアイコンだったりするようですし、神話的なモチーフでもあることとか色々と話は聞きました。ただ、「そもそも日本人の女の子は蛇が嫌いだよ」と打ち合わせで言ったらみんなびっくりしていましたね(笑)。僕は個人的に蛇に思い入れがあるわけではないから、ブルガリの明確な“やりたいこと”のなかで何ができるかという試行錯誤でした。
――同じく印象的だったバッグでのデニム素材の使用は、ブルガリ史上初とのことです。
何度も打ち合わせを重ねていく中であちらから提案されたものでしたが、せっかくなら皮以外のものをやったらいいんじゃないかとは話していました。これがブランド初でOKされたのなら、次はもうひと声、ブルガリもさらに新しい挑戦をするかもしれませんね。
――「セルペンティ」コレクションのスタッズがあしらわれたバッグなどは藤原さんのルーツとも密接な“70年代のパンク”がデザインのエッセンスになったとうかがいました。
そうですね。「セルペンティ」の資料にあった蛇の鱗を模した六角形の柄がパンクの鋲に似ていたので、それをうまく使おうと。今回、PEEL&LIFTの細谷(武司)くんもフィレンツェのデザインスタジオにも打ち合わせにも来てもらったんです。「セルペンティ」とは違うもう一つのカプセルコレクションである「BBフラグメント」のトートバッグなどは彼にも相談しましたし、ウォレットチェーンはジョニー・ロットンがつけていた犬の鎖を細谷くんがモチーフにして作ってすでにあったものが原型ですね。それをラグジュアリーにクロームメッキにして、ブルガリのクオリティで仕上げてもらいたいと思ったんです。ブルガリがこれをパンクだと思っているかはわからないけど、やっぱり“爪痕を残したい”というのはあったので(笑)。僕はすごく気に入っていてサンプルをもらってからずっと付けているんですよ。
――例えば、コラボレーションをするなかで意外性が求められている実感はありますか?
そういう部分もあると思いますけど、ラグジュアリーブランドの良さって“ヘリテージ”でもあるからそのバランスですよね。そのブランドが、スタンダードでヘリテージなものをしっかりやっておいてもらわないと“変わったこと”はできなくなってしまう。当然ブルガリはそういうことをしっかりされているので、逆に僕を免罪符みたいに使いながら新しいことやって、「藤原ヒロシに頼んだらこんなことになっちゃったんだけど」って言い訳に使ってもらえればいい(笑)。実際、僕は自分のことをそういう役割だと理解しているので、相手がどこだろうと、向こうの邪魔をしないように、同時に自分も楽しめるようにやっていますよ。
――「BVLGARI X FRGMT」で新しいブルガリへの入り口のようなものが拓けたような気がしました。実際にバッグを手にとってほしいと思う人物像を考えることはありましたか?
ファッションが好きな人で、もちろんブルガリを知っているけど今まで買うことがなかった人に響くと嬉しいですね。言葉にするのは難しいけど、ブルガリの立ち位置っていわゆるファッションともまた違うじゃないですか。
――雲の上の存在のような。
そうだよね。本当のセレブが持っているイメージだからこそ、今回はカジュアルなファッションを楽しんでいるような人がさらっと持ってくれたらいいなと思っています。
BVLGARI X FRGMT:
阪急うめだ本店 1F コトコトステージ
会期:2019年6月5日(水 )~ 6月11日(火)
住所:阪急うめだ本店 1F コトコトステージ
大阪府大阪市北区角田町8-7
TEL:06-6313-7720
営業時間:日曜日~木曜日10:00 – 20:00 / 金曜日・土曜日 10:00 – 21:00
阪急メンズ東京 1F メインベース
会期:2019年6月5日(水)~ 6月18日(火)
住所:東京都千代田区有楽町2-5-1
営業時間:11:00 – 20:00
お問合せは、下記ブルガリインフォメーションデスクまで
TEL:03-6362-0100
営業時間:10:00 – 18:00 *土日祝日は休業
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