2016.03.30

シネフィル小学生・原田理央と藤原ヒロシの映画談義。

『Ring of Colour』の最年少ライターである12歳の原田理央くんは、これまでに観た映画の本数が優に600本を超えるという生粋のシネフィルだ。将来の夢は当然、映画監督。彼が書く記事は、批評家並の歯に衣着せぬコメントと映画を1枚の絵で表現するユニークな内容で注目を集めている。今回は理央くんがカナダへ留学する直前に行われた藤原ヒロシとの対話をお送りする。

Photo_Kazufumi Shimoyashiki | Text_Yusuke Osumi | Edit_Issey Enomoto

原田理央

2004年生まれ。藤原ヒロシの“最年少フレンド”である、12歳の映画が大好きな小学生(※取材時)。元ソニー・ミュージックアーティスツ会長の原田公一氏を父に持ち、藤原ヒロシとの繋がりは公一氏経由だが、藤原と理央くん、2人だけで映画を観に行くこともしばしばあるという。

http://ringofcolour.com/archives/author/r-harada

ヒッチコックでのめり込んだサスペンスの世界。でも、ホラーは苦手。

藤原「理央くんは何がきっかけで映画が好きになったの?」

理央「『スター・ウォーズ』(※1)です」

藤原「それはいつですか?」

理央「うーん、4歳」

藤原「4歳の記憶、あんまりないけどな、僕。どういうところが好きだったの?」

理央「戦闘機が飛ぶところが好きだった」

藤原「『スター・ウォーズ』の前に何か観た記憶ない?」

理央「(しばらく考えて……)ない」

藤原「じゃあ、それがきっかけなんだ」

理央「うん」

お母さん「はい! でしょ!」

理央「……はい」

藤原「(笑)。『スター・ウォーズ』ってかなりポピュラーな映画だし、皆が必ず観ているはずだから、理央くんみたいに映画にハマるきっかけにはなりにくいと思うけどね。『スター・ウォーズ』の次に衝撃だったのは何?」

理央「(しばらく考えて……)最近観たやつでもいい?」

藤原「うん」

理央「じゃあ『ダイアルMを廻せ!』(※2)かな」

藤原「そこでヒッチコックに芽生えたんだ。でも、きっかけとしては僕が貸した『北北西に進路を取れ』(※3)だよね」

理央「うん。テレビシリーズの『ヒッチコック劇場』も買いました」

藤原「じゃあ今、好きな映画監督はヒッチコックなんだ?」

理央「あとスピルバーグも好き」

藤原「そっか、僕が子どもの時の映画の記憶って、お父さんに連れられて『007』『男はつらいよ』を観たことなんだけど、自分から好きになったのはホラー映画だったのね。子どもは皆、ホラー映画が好きなのかと思っていたら、理央くんはホラーがダメなんだよね」

理央「うん……怖い……」

藤原「『スター・ウォーズ』だって、ホラーではないけど、少しグロテスクだったりするじゃない? そういうのは大丈夫なんだ?」

理央「うん。だからヒッチコックは好きなんだけど『サイコ』は観られない。観ようとしたんだけど……」

藤原「今まで観たなかで一番怖かったのは?」

理央「う~ん、『スピード』かな。最初にデニス・ホッパーが警備員の耳を突き刺すところが……」

藤原「ショッキングシーンがダメなんだね。『スピード』なんて全然怖くないじゃん。でも『ワールド・ウォーZ』は大丈夫だったんでしょ? あれは怖くなかった?」

理央「怖かったけど、友達と一緒だったから頑張って観た」

藤原「そうなんだ」

理央「怖い映画は全然好きじゃないんだけど、サスペンスとかスパイ映画は好き」

藤原「ハラハラドキドキする映画が好きなんだ。『24』(※4)もよかったって言ってたもんね」

理央「うん、でもシーズン2がまだ観終ってない」

藤原「ちょっと難しかったんだけど『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は面白かったな。専門用語がかなり多くて少し理解に苦しむんだけど」

12歳とは思えない大人びた趣味。最近のヒット作は『ブレードランナー』。

藤原「今後楽しみな映画はある?」

理央「『ブレードランナー2』『レヴェナント』が楽しみ。でも、『レヴェナント』はR指定だから映画館で観られない……」

藤原「そっか。残虐的なシーンが多いからかな。そういうのは後々貸すようにするよ。『羊たちの沈黙』とか理央くんに是非観てもらいたいんだよね」

理央「頭飛ぶんじゃなかったっけ……?」

藤原「それは『ハンニバル』。『羊たちの沈黙』はその前のもので、もっとサスペンス的な作品」

理央「グロい?」

藤原「そんなにグロくないよ。『羊たちの沈黙』は僕が好きな映画のなかで5本の指に入るんだよ。それを監督したジョナサン・デミが撮った『ストップ・メイキング・センス』(トーキング・ヘッズのライブ映像をおさめた作品)も最高だよ。今度貸すね」

理央「うん」

藤原「最近観た作品で他によかったのはある?」

理央「黒澤明の『天国と地獄』(※5)」

藤原「へえ。割とシュールな作品だと思うんだけど、どこが面白かった?」

理央「特急電車のなかからお金を投げるシーンがすごかった」

藤原「あの映画って最初に面白いところが来ちゃうというか、結局、誘拐されたのがうちの子じゃなくてよかったと思ったけど、っていうところが面白いじゃん、話としては」

理央「うん」

藤原「後半は追っかけるけど、エンディングがすっきりしないでしょ? 割と大人っぽい部分にも反応するんだね。ちなみに今年のアカデミー賞の結果は納得した? 『マッドマックス 怒りのデスロード』は好きだった?」

理央「うん。『マッドマックス』が6つの賞を取った(録音賞、音響編集賞、編集賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、美術賞、衣装デザイン賞を受賞)のは当然だと思う」

藤原「『007 スペクター』(※6)じゃなくてよかったの?」

理央「うん。『マッドマックス』のほうが断然上。今回のボンドはなんかコメディっぽくて……あんまりカッコよくなかった。あと最近『ブレードランナー』(※7)を観て、すごく面白かった」

藤原「お、それも大人っぽいじゃん。あれって何年が設定だったんだっけ?」

理央「2019年なので、もうすぐ」

藤原「そうだよね。長く生きていると未来が過去になっちゃうんだよな……」

理央「ちなみに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が2015年でもう過ぎちゃった。でも今、浮くスケボーのデッキは作っているって聞きました」

藤原「まだ実現できてないんだね。『ブレードランナー』だったらせめてフクロウのロボットくらいはできて欲しいよね」

理央「僕は『ブレードランナー』だったらヘビのロボットとか、『スター・ウォーズ』だったらライトセーバーもつくって欲しい。あと『007 スペクター』の指輪も……。そういえば、ダニエル・クレイグが着た水着がオークションに出ていた……」

藤原「(笑)。そういうプロップを追うだけでも映画は奥が深いよね」

 

理央くんが将来作りたい、映画の方向性とは?

藤原「『Ring of Colour』の理央くんの記事を読んでいる人は、やっぱり理央くんの描く絵がすごく気になっているみたいなんだけど、あれはいつから描いているの?」

理央「気づいたら描いていたんです。『Ring of Colour』がきっかけでちゃんと描きだしたんだけど、それまでもメモとか感想はずっと書いていた」

『Ring of Colour』で作品評とともにアップされる絵は理央くん自身が描いたもの。

 

藤原「あの絵はすごいよね。どんどんクオリティが上がっているし。僕は、最初の頃の容赦なくズバッと切るコメントも好きだったんだよね」

一同「(笑)」

藤原「(PCを開く)見返してみると……ヒッチコックが好きなのに『めまい』(※8)には納得がいかなかったんだね」

理央「うん」

藤原「今は観た映画を文章と絵で記録しているわけだけど、最終的には自分で映画を撮りたいんだよね?」

理央「うん」

藤原「自分でつくるとしたらどんなのにする?」

理央「未来もののSF」

藤原「どんな?」

理央「うーん……未来では人工知能が使われていると思うから……」

藤原「『ブレードランナー』だってそうだよね。人工知能が意思をもっているっていう……。もう少しヒネリが欲しいところだね」

理央「うん……。でもSFが撮りたいんだけど、あんまりCGは使いたくないっていうのはある。『スター・ウォーズ』の1、2、3がCG使いすぎでいまいちだったし、『おしゃれ泥棒』みたいなちょっとしたトリックが好きだから」

藤原「それなら作ろうと思ったら作れるね。CGを使わないっていうことは役者に演技指導をしなきゃいけないし大変だよ?」

理央「楽しそう」

藤原「へぇ、政治家思考じゃん(笑)。それじゃあ、あと3年以内で1本、ショートフィルムでもいいから作品をつくることを目標にしようか」

理央「うん! 中学に入ったらつくれそうだから頑張る!」

藤原「今度行く学校は(4月からカナダの中学校へ進学予定)映画クラブみたいなのがあるの?」

理央「ないけど、自分でつくっていいって。おっきなシアターもあるし」

藤原「じゃあ、理央くんが映画をつくったら、その時はBGMをつくるよ」

理央「やった!」

藤原「カナダに行ったらメールでやり取りすることになるね」

理央「うん」

藤原「じゃあ、これまではInstagram経由だったから、ちゃんとメールアドレス教えてね。ちょっとずつエグい映画送っていこう」

理央「えっ……」

藤原「(笑)。まずは『羊たちの沈黙』を観てもらって、おーこれはよかったって思ったら、次はデヴィッド・フィンチャーの『セブン』を観せましょう」

理央「デヴィッド・フィンチャーは好き。『ソーシャル・ネットワーク』もよかった。『セブン』はどんな映画?」

藤原「猟奇殺人の話のサスペンス映画だよ。7人を次々と殺していくっていう」

理央「えー怖そう……でも、頑張る……」

藤原「頑張ってね(笑)」

 

【対談中に出てきた作品に関する理央くんの記事】

※1『スター・ウォーズ』http://ringofcolour.com/archives/2431

※2『ダイヤルMを廻せ!』http://ringofcolour.com/archives/9764

※3『北北西に進路を取れ』http://ringofcolour.com/archives/8623

※4『24』http://ringofcolour.com/archives/7386

※5『天国と地獄』http://ringofcolour.com/archives/6970

※6『007 スペクター』http://ringofcolour.com/archives/1712

※7『ブレードランナー』http://ringofcolour.com/archives/13157

※8『めまい』http://ringofcolour.com/archives/10992

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