2015.12.04

Talking About the Future of Digital Media : 2

2015年11月18日、アップルストア表参道にて、「デジタルメディアの未来」をテーマにしたトークイベントが開催された。登壇者は、藤原ヒロシのほか、クリエイティブディレクターの梶原由景と、エディター・ライターの榎本一生。テクノロジーが進化し、SNSの普及が進むなかで、デジタルメディアはこれからどのような変化を遂げていくのか? 今後のデジタルメディアのあり方とは? 当日のディスカッションの内容を全文書き起こしでレポートする。

Photo_Apple Store, Omotesando (c) Kensuke Tomuro | Text_RoC Staff

Part 1からの続き)

藤原:続いて、SNSについてお話をしましょうか。SNSは良いところと悪いところ、いろいろあると思います。たとえば、僕が「この映画が面白い」と書くと、「僕も面白いと思った」という意見もあれば、「全然駄目だった」というネガティブな意見も出る。もちろん、ネガティブな意見は見たくないという気持ちも正直あるのですが、それは観た人の素直な意見なので仕方がないところもある。でも結局、世論調査とかと同じで、真ん中の層だけがどんどん突出してしまい、当たり前の意見だけになってしまう。

10年20年前に渋谷や原宿を歩いているおじさんとかって、めっちゃださい人もたくさんいた。でもいまは洋服を気にしない人もユニクロを着るから、ださい人がいなくなってしまった。それが良いとか悪いとかいう話ではなくて、街が全体的にお洒落になっていった。その代わりに、とんがった人たちも削られていっていた。それはSNSも同じことで、何か面白い意見を言っても、まわりの声によってそれが薄れていって、真ん中で落ち着いてしまう。そのように感じているのですが、どうですか?

 

榎本:言いたいことが言える環境は大切だと思う反面、意見や見方がどんどん平準化していってしまうのは、SNSの弊害かもしれません。

 

藤原:そうなんだよね。匿名性のコメントってなんでも言えちゃうからすごく無責任。思いついたことをすぐに書き込んでしまうし、違うところにミスリードされることがあったりする。何かを特別なことを好きな人やマニアックな人にとってはつまらないものになってしまう。

 

榎本:メディア側としては、プロとしての力を見せないといけないなあと思うのですが。

 

藤原:雑誌の場合は、名物編集長がいたり、誰々が書いた記事とかが力を持っていて、そういうのを僕たちは読んできました。

そういえば、今年のお正月、家でテレビを観ていたら、60年代や70年代の番組をやっていたんですね。それを見ていると、当時はいわゆるコミューンみたいなのがあって、少人数でプロフェッショナルな人たちやその分野に興味のある人だけが話し合っていて。僕たちがパンクを好きになったときもそうだけど、カルチャー的にもそういうところから大きくなっていったと思ったんですね。

で、いまそれを置き換えると、面白いカルチャーが面白いものであり続ける期間があまりにも短すぎる。これを面白いと誰かが言って、一週間後にはすごく大きいブームになっているものもあるし、その面白さをキープするのが難しい。なんとなく、コミューンじゃないんですけど、一般的なSNS的な意見はすべて無しにして、本当に一方通行で、マニアックな情報ばかりがあるサイトがいいなと、ぼんやりと思いながらお正月を過ごして。

そのあと、こういうのがあったらいいんじゃないかと梶原さんらに相談したんです。ハニカムはどちらかというと、そういう一方通行のメディアだけど、たとえば梶原さんの食についてのブログはすごく興味があるけれど、映画については別に見たくなかったり。あるいは、藤原ヒロシがどんな映画を観ているかは興味がないけど、スニーカーのことなら見たいという人は大勢いるかもしれない。そういうカテゴリーがちゃんと分かれているメディアがあるといいなと思って、この春くらいからですかね、梶原さんと準備を進めてきました。

今日はメディアの話をするついでに、まだテスト段階ではあるんですけど、僕たちがつくっている新しいメディアを発表したいと思います。今日からローンチしているので、ぜひご覧いただければ。これです。『Ring of Colour』(※以下RoC)。これがいままでのメディアやSNSと何が違うのか、ちょっとお話できればと思います。

 

梶原:SNSとも違うし、ブログとも違うというところですかね。藤原さんの日常はみんなが気になるところですが、一方で僕が日頃何をやっているかは興味がなくても食とか一定のジャンルの情報は見たいという人はいると思います。僕がハニカムのブログについてよく言われるのが、大阪へ行くときに僕のブログで「大阪」と検索すると、大阪のグルメ情報が見つかると。RoCは、そういった知りたい情報にダイレクトにアクセスできるように設計しています。単に情報をカテゴリー別に分けているのではなく、各カテゴリーのなかで、プロというよりは一家言ある人、面白がり方がプロフェッショナルな方々が書いていて、しかも知りたい情報にスムーズにたどり着ける、そんな使い方ができるサイトかなと思います。

 

藤原:本当の意味でのプロが書くわけではなく、セミプロというか、それで食べているわけではない人が書く。プロはプロで素晴らしい意見を持っているけど、プロになるとしがらみがあったりもするので、本当の意見が書けなかったりもしますから。

あと、いままでのメディアとすごく違うのは、いままでのメディアは新しい情報をメインに考えてきたけれど、RoCでは新しさにはこだわらない。みんなが日々食べているものでもいいし、僕が10代の頃に観た映画でもいい。過去のものに対しても、みなさんと情報を共有できるようにしていきたいと思っています。

 

梶原:特にファッションの部分に関しては、過去のアーカイブものがわりと出てくるかなという感じですね。ライターもそういう方にお願いしています。

 

藤原:榎本くんは、いままでの他のメディアと、このRoCから始まるこれからの未来について、何か思うことはありますか?

 

榎本:最初にヒロシさんや梶原さんからこのお話を聞いたとき、うまいところを突いているなと思いました。かゆいところに手が届くというか、これまでありそうでなかった感じがしました。『Ring of Colour』の登場によってデジタルメディアのあり方が劇的に変わるかというと、そうではないかもしれませんが、情報感度の高い人たちにとってはすごく有益な情報が集まるサイトになると思います。

 

藤原:SNSでみんなが意見を寄せ合うことで薄れてしまう情報よりは、少人数でいいからコアな情報を常に発信していきたいし、今後もそれが薄れないようにしていきたい。

 

榎本:先ほど僕が、プロの力を見せつけないといけない、と言いましたが、ヒロシさんの言うように、プロにはしがらみがあるのも現実ですし、RoCではプロというよりもその道に通じた人がキャッチした情報を発信していくという感じですね。

 

藤原:そうですね。僕たちが面白いと思う人が、どういうものを食べているかとか、どういう音楽を聴いて育ってきたのかとか、どういう映画を観てきてそういう考えになったとか、そういうことがとても気になる。あとはアーカイブ的なところも掘り下げていくことで、人選も含めて、RoCらしさが出ていければと思っています。

もちろん、運営にあたって収益がゼロではできないので、広告は広告できちんとやっていく。たとえばCARのカテゴリーのなかに新しいクルマの情報が入ったりとか、スポンサーが入れてくれる面白い情報があったりとか。そこはみなさん理解してもらったうえでおつきあいいただければ。

 

梶原:広告的な部分も読者にとっては知りたい情報になるかなという気がします。RoCのフィルターを通った新しい情報も価値があるのかなと思いますので。

ちなみにRoCはもうすでにいろんな人が書いていて、特に映画のカテゴリーに特筆すべき人間がいますね。

 

藤原:そう、最年少映画評論家がいます。小学校6年生の原田理央くん。いままで観た映画が600本って言っていたかな。面白かった映画は自分で絵に書いている。ただ、すべてネタバレなので、みなさん気をつけてください(笑)。

 

梶原:その映画の結末が書いてあるという(笑)。

 

藤原:いつか注意しようと思うのですが(笑)。

 

Part 3へ続く)

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