2022.01.15

造形作家・池内啓人の世界観 センスで作り上げた身に着けるジオラマ

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SKELETONICS MPS-15sk: [MULTI] H. 2,400 × W. 1,750 × D. 1,500mm MIXEDMEDIA 2015

「スターウォーズ」や「ゾイド」、「ガンダム」などのSFやロボットアニメから影響を受けた池内啓人は、既製品のプラモデルや工業製品のパーツを組み合わせた、近未来的なスタイルを特徴とする造形作家だ。近年は「SHU UEMURA(シュウ ウエムラ)」や「GENTLE MONSTER(ジェントルモンスター)」への作品提供、KOHHのアルバムのジャケットデザイン、「BALENCIAGA(バレンシアガ)」のキャンペーンビジュアルを手掛けるなど、国内外で高く評価されている。その池内が、東京・渋谷のアートギャラリーSAIで初の大規模個展「IKEUCHI HIROTO EXHIBITION」を開催中だ。

Text_Yuki Koike Edit_Mio Koumura

池内は1990年東京生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科を卒業しており、学生時代の多くをプラモデル制作に充てた。卒業制作で、「パソコンの内部が秘密基地に見える」という発想からプラモデルを組み合わせた“ハイブリッド・ジオラマ”を制作。その作品を原点に、現在ではスーツやヘッドセット、ガジェットなど、身に着ける工業製品をベースに制作する形に進化した。

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#1808 H. 370 × W. 360 × D. 440mm MIXEDMEDIA 2018(写真中央)

インスピレーションは「映画や小説、哲学書などから」と、かなりインテリジェンス。会場の入り口付近にも、池内が影響を受けたマルセル・デュシャンを紐解く哲学書「独身者機械」が置かれている。一見、緻密に計算されているのかと思いきや、設計図はなく、作り方は極めて感覚的だ。ネット通販で素材となるプラモデルを調達し、気になるものを当てはめていくという。よく使うパーツは、ロボットの接続部で、「変な意図を入れたくない」のが理由。ヘッドセットにウサギの耳かツノのようなモチーフが見られるのは、本人いわく90年代や00年代のアニメの影響で、多くの作品の構図がシンメトリー(左右対称)なのは、スタンリー・キューブリックの映画が影響したようだ。

そのような類い稀なセンスを組み合わせてできた作品は、ファッションとの相性もいい。自身でコーディネートして写真を撮るなど、作品の世界観を作り上げる。「ミニマルなデザインの中に機能がある服が好み」だといい、展示では「UNITED NUDE(ユナイテッドヌード)」や「MINOTAUR(ミノトール)」、「ACRONYM(アクロニウム)」などと絶妙にマッチしていた。

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#2101 Headset : H. 355 mm × W. 250 × D. 490 mm MIXEDMEDIA 2021

新しい野望は、“温室”のような部屋を作ることだという。ジオラマ作品を飛び出して、進化し続ける今後の活動にも期待したい。なお、展示中の作品はほとんどが早々に売約済みとなっていた。ますます注目度が高まる池内の世界に、ぜひ足を踏み入れてほしい。

 

IKEUCHI HIROTO EXHIBITION

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会期 : 2022年1月8日(土) ~ 1月30 日(日)
会場 : SAI
住所 : 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 6-20-10
RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
時間 : 11:00 – 20:00(無休)
電話 : 03-6712-5706

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