高松聡「FAILURE」
宇宙を目指した高松聡さんの初個展「FAILURE」が表参道で開催中だ。「スタートレック」シリーズに熱中したことくらいしか宇宙というものに全く興味のなかった私の人生、ご紹介いただき伺ってみたところ幸運にも高松さんにご紹介を受けた。
まさか、高松さんが日清カップヌードル「NO BORDER」「FREEDOM」でも宇宙をテーマにしたCMシリーズを手がけたとは。そのCMの訴求力は力強く、子どもながらに記憶にあった。高松さんは子ども時代から宇宙飛行士になると決めていたが、視力が悪かったことで断念し電通に入社。CMはアートディレクターとして活躍していた頃に手がけた作品で、憧れの場所である宇宙に少しでも近づきたいと自身の仕事を通して夢が繋がった傑作だったのだ。
2014年、高松さんが日本の民間人としては初のISS(国際宇宙ステーション)搭乗資格を持つ宇宙飛行士となることが決まり、大きく報じられたそうだ。これも恥ずかしながら、宇宙への関心の低く私は全く存じ上げなかった。これを機に、広告業界からは引退され、宇宙旅行を計画していた英国歌手サラ・ブライトマンのバックアップクルーとしての訓練がスタートした。その時高松さんは52歳。8ヵ月間、800時間の訓練は並大抵の努力ではなかったことだと思う。「でもある朝、サラがいなくなっていてね」とサラがまさかの訓練離脱となってしまった。バックアップクルーである高松さんにとって彼女の不在は宇宙飛行自体の取り辞めを意味する。脳裏には様々なことが廻りしばらく放心していたそうだが、訓練を全うすること、そして幼少期から肌身は出さず持っていたカメラでその日々を記録することを決心されたそうだ。
卒業式まで訓練を全うし、卒業式にも出席。ロシア語のスピーチもした。「卒業証書はいただいたが、宇宙飛行士としての認定はされなかった」と高松さんは振り返り、この展示は「宇宙飛行士にはなり損ねた失敗の記録だ」と少し上段混じりにお話しされていたが、その軌跡は貴重な時間の連続に映った。高松さんの写真には”星の街”で過ごした厳しい訓練の合間にある穏やかな時間、そして宇宙飛行士に邁進した日々への愛情が詰まっている。私も宇宙というものが少しだけ身近に思えた。
■FAILURE(フェイリァ)
開催期間:2020年9月4日(金)~27日(日)
開催場所:「スぺース フィルムス ギャラリー(SAPACE FILMS GALLER)」 東京都港区北青山3-5-6 青朋ビル 2F
開催時間:11:00~19:00
定休日:月
Tel.:03-6434-9029
http://spacefilms.jp/
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