2020.08.01

あの”ユル”グラフィックの生みの親 Naijel Graphってどんな人?

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私たちは雑誌POPEYEの表紙で、Beastie Boysのオフィシャルグッズで、ブランド創立70周年を祝うadidasの店頭で、Naijel Graph(ナイジェル・グラフ)の作品を目にしている。あのお笑い芸人のグッズや、あのレジンアーティストの作品、あのコーヒーショップのマグカップ、あのサンドイッチストアの食器、あのブランドのTシャツ、あのアーティストのイベントフライヤーでも……Naijel Graphの名前を知らなくても、ユルいけれど似ている著名人のイラストや有名なロゴは記憶に残るし、人を惹きつけるチャーミングな印象がある。そしてそんな絵を描く人はきっと、愛嬌のある”ユル”い人に違いない。そんな先入観とともに、Ginza Sony Park に新たに誕生したポップアップストア「Kiosk 2」のスタートを飾るNaijel Graphを尋ねた。

Text_Saori Ohara Edit_Mio Koumura

学生時代はどんな風に過ごしていましたか?

高校まで野球をしていたんですが、美大を目指して三浪して、結局桑沢(デザイン研究所)を2年で中退しました。桑沢には車で通ってたんですけど、度々レッカー移動されたり、授業に行かずにレコード掘ったり……親不孝者ですね、むちゃくちゃでした(苦笑)。


でも今や、売れっ子ですね。ウェブサイトのプロフィールには、アートディレクターの立花文穂さんを師と仰ぎ、運転手もしていたとありますが、きっかけは何だったのですか?

出会ったのは美術の予備校で、僕に初めて絵を教えてくれのがタッチーだったんですよ。僕は一浪した夏頃に予備校に通い始めて、周りよりスタートが遅かったんです。でも、みんなすごい量の鉛筆を束で持って授業に挑んでいるのに、自分は数本くらいしか持っていかず、ヘッドフォンして絵を描いていたので、誰も相手にしてくれなかったし教えてくれなかったんですよ。でも、ある時、タッチーが僕のところに来て、『お前今いくら持ってんだ』って(笑)。僕が財布の中身見せたら、『かせ』って言ってそのお金で売店で鉛筆をたくさん買ったんです。それで僕が絵を描くんですけど、途中で『どけ』って言って、僕の代わりに黙々と描いていくんです。そこで『絵ってこう描くのか』みたいなことがわかっていって、この人むちゃくちゃかっこいいなって思って。それで、弟子にしてほしいって言ったら、運転手ならいいよって言われて(笑)。今も、展覧会とかあったら運転手しています。

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—  それからずっと慕われているんですね。ブレイクスルーのきっかけになったBeastie Boysとの仕事は、どういう経緯だったのですか?

 原宿のBeams Tで、レコードのジャケットをサンプリングした作品の展覧会をしたことがあったんです。その時期に丁度、Beastie Boysと同じレーベルのNorah Jones(ノラ・ジョーンズ)が日本でコンサートしてて、レーベルのプロデューサーのJohn Silva(ジョン・シルヴァ)も来日してたんですよ。その彼が滞在中、たまたまBeams Tに来て僕の展示を見てくれたんですけど、偶然にも僕が描いてた作品たちの中に、John Silvaが育てたアーティストがいっぱいいたんです。Beastie含め。で、そこに売ってたTシャツとかをたくさん買ってくれて、アメリカに帰ってからももっと買いたいってBeamsに連絡があったそうで。Beamsの人がせっかくの機会だから直接連絡してみてはどうですか?って繋げてくれました。僕、運だけはよくて(笑)。Mike Dとも打ち合わせで会えたんですけど、ほんと彼もめちゃくちゃいい人でしたね。

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ちなみに、どうして活動名がNaijel Graphなのですか?

 日本で活動するうえで色々と名前を考えたんですが、外国人かも?って思われたらちょっといいんじゃないかなって、遊び心半分に思いついて。ちょっと国籍不明っぽい方が何かと面白いような気がしたんです。それでイギリス人の友達に名前を借りて、綴りをローマ字っぽくしたのがNaijel Graphです。

現在、Ginza Sony Parkに新しくできたKiosk 2の第一弾企画として作品が展示・販売されていますが、こちらについてもきっかけやコンセプトなど聞かせてください。

 建築家の荒木さん(The Archetype)が声をかけてくれたのがきっかけです。もともとGinza Sony Park にKioskっていうスーベニアスペースがあって、真横にKiosk 2を同じサイズ、同じデザインでクリエイターにスポットを当てたスペースを作るということで。KioskにはGinza Sony ParkTシャツやステッカーとかタンブラーとか、オフィシャルグッズが売られてるので、Kiosk 2ではそれをクリエイターがアレンジ&創造するというコンセプトで展示・販売したら面白んじゃないかとお話いただいて。“Sonyの敷地の中に、Sonyで遊んだグッズがある”というアイデアはユニークだし、僕もそのイメージをベースに新作の作品やTシャツなどを作りました。

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そのコンセプトを聞くと2つのKioskをより楽しめますね。オープニングDJはミュージックレーベルHole and Hollandチームが務めたそうですが、Naijel Graphさん自身もそのメンバーなんですよね。レーベルのこれまでの活動についても教えてください。

現在レーベルとして共に活動しているメンバーはMamazuYO.ANFUSHIMINGEdo KanpachiSTONE’ DHaruka KatagataNaijel Graphです。国内外のアーティストの音源リリースがメインですが、2018年から音楽とアパレルを融合したシーズン毎のマーチャンダイズ展開もスタートしました。僕は主に、マーチャンダイズのアイデアやデザイン、イラストなどを担当していて、レーベルではEvisen SkateboardsTightboothSon of The Cheeseとか、昔から仲の良いブランドの音楽を担当したり、映像音楽も多く手掛けてます。

今後もアートと音楽とアパレルなどに携わっていくのかと思いますが、ここ数数ヶ月は新型コロナで世界中の経済活動や生活リズムが崩れたり変化しています。個人的にはどうですか?今後の予定や展望など、教えてください。

そうですね。生活リズムは変わったことで考える時間もありましたけど、僕としては結局やることは一緒だから、一生懸命楽しく、丁寧に描いて、もっとたくさんのことを伝えたいって思いました。Hole and HollandでもYO.ANHaruka KatagataMamazuのリリース予定がありますし、アパレル関連のコラボプロジェクトも控えています。12月にはBeams TBeams Recordsで同時開催するポップアップや、近々渋谷の神泉に、音楽とアパレルの融合ショップのオープンも予定しています。いろいろ声をかけてくれる方たちがいて本当にありがたいです。具体的にこうなりたいっていうのはないんですけど、自分が面白いなって思えるものにこれからも取り組んでいきたいですね。

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■Kiosk 2 feat. NAIJEL GRAPH
期間 2020年7月10日 (金) – 8月10日 (月・祝)
時間 11:00-19:00
(当面の間の営業時間。状況により適宜見直す可能性あり)
 公式サイト

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