2020.06.28

eggから200万超えのアートまで、アートブックフェア”蔵出し”の中身


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コロナ自粛を経て、渋谷も徐々に活気が戻りつつある。201911月に新装開店した渋谷パルコも賑わいを取り戻し、613日からはポップアップスペース「POP UP JUN」も再始動。自粛前に予定していた初のオンライン開催となったウェーバーの大Tシャツ展に続き、今回は蔵出しと題したアートブックフェアを開催中だ。創業80年の老舗古書店、小宮山書店が所有する、まさに蔵出しの名品が渋谷に収集されている。セレクターには元「bonjour records」のチーフバイヤーで、現在はDJやディレクターとして活動する上村真俊を抜擢。全三章にわたって企画されるアートブックフェア、その蔵出し第一章の中身とは?

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 1階から4階まで、全6フロア(※M2FM3Fを含むため)にわたり写真や雑誌、古書、アートがと所狭しと並ぶ小宮山書店。タイトル通り、館の中にひしめく数々のレアものが、POP UP JUNの店内にはお目見えしている。

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「日本のアーティストやフォトグラファーにスポットを当てるとなると、荒木経惟さんや森山大道さんという方々が基軸となる。もちろん含めるが、自分たちにとって新しい発見を共有するという視点から、アーティストと作品を選ばせてもらった」と解説するのは、国内外のアートブックフェアに足繁く通うという上村真俊。そうしたアーティストの例としてまず挙がったフォトグラファー稲嶺圭一は、「作品を見た時に、まさに『和製ウェーバー』だと感じた。作家からすれば本意ではない展示形式かもしれないが、本物のBruce Weber(ブルース・ウェーバー)と紹介することで、その意図を伝えたいと考えた」。また、店内レジ後ろに鎮座する小宮山書店とのゆかりが深い三島由紀夫の直筆毛筆書額(価格は200万円を超える)。その前面にあたる壁には「近年、John Willie(ジョン ウィリー)の作品や彼が発行したビザール誌が注目を集めているが、その日本版のようなタッチの作品を、三島由紀夫に憧れて三島の性を名乗った三島剛さんに感じ、渋谷に持ってきました」と、空間編集にもこだわりを感じさせる。

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 奥に設けられたガラスのショーケースには、古書がずらり。「『原宿UFO』は、原宿表参道でホコ天が写っていたり昔の原宿の姿を映した写真だけではなく、アートディレクションもすごくいい。また、先日亡くなられた佐伯敏郎さんの画集は、作品はエロとかそういうものを超えてその狂気に美しさがある。装丁もすごくいいし、逆にこういうものが今っぽいのではないかとさえ思わせてくれる」と紹介。中には、1冊十万円を超える貴重な書籍も見つかった。

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 雑誌はi-DELLE、ハイファッションなど、国内外のバッグナンバー積まれているが、目を引くのは渋谷の代表誌「egg(エッグ)」だろう。なんと1冊約4,000円という価格にも驚くが、その背景について「カルチャー誌はアーカイブしている人が多いが、eggを保管している人はそう多くはない。90年代のコギャルブームは世界的に見ても特殊なムーブメント。暴走族が外国人から人気があるが、同じような印象がある」と上村は話す。

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また、同じく再評価されている雑誌としてあげられた90年代に創刊したインディペンデント誌の「DUNE(デューン)」も、海外から訪れた某デザインチームが一式購入するなど、年々価値が高まっているという。「今やコレクターアイテムですね。1号目から見返すと、林さん(故・DUNE編集長 林文浩)は早くに才能を見抜いていたんだと思います。海外クリエイターと親交が深く、この頃からソフィア・コッポラやハーモニー・コリンをピックアップしていたんです」。DUNEのアーカイブの中には、POP UP JUNコミュニケーションディレクター山本康一郎がスタイリングやインタビューを担当した号も並んだ。

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 加えて、くっきーや米原康正、HAJIME KINOKOら旬なアートが並び、「『好き』『嫌い』『タブー』ではなく、批判や踏み込みを恐れずに選ばれた世界のマーケットに通用するそのラインアップは海外基準」と上村が語る、小宮山書店ののあるラインアップが堪能できる。

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 小宮山書店に続き29日からは第二章として、打って変わって新鋭アートブックショップにフォーカス(オンラインショップでは引き続き、第一章のアイテムを継続販売)。エッジの効いたアートブック等で着実にファンを獲得してきた杉並区の「flotsam books(フロットサムブックス)」と、独自視点で蒐集したアートコレクションをベースに、幅広い分野に拡張し続けているカルチャーレーベル「BLANKMAG(ブランクマグ)」がタイマンを張るという。次回はどんな蔵出しに出会えるのだろうか。第二章はもちろん、第三章まで目が離せない。

POP BY JUNのアートブックフェア「蔵出し」 初回は小宮山書店が出店

■”蔵出し”オンラインストア
https://www.junonline.jp/special/popbyjun-kuradashi/

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