2019.01.11

ブロックスカルを描く注目のNY画家、エディ・マルティネズの世界

Eddie Martinez in his Studio

NY
・ブルックリンを拠点に活動するアーティストEddie Martinez(エディ・マルティネズ)が、アジア初となる個展をスタートした。1977年生まれの彼は、その感情的で荒々しいタッチからは想像できないほどの穏やかな人物だ。ほぼ独学でアーティストへの道を上り詰めた彼が日本初となる個展に用意にした作品群は「Blockhead(ブロックヘッド)」ーーー彼がアーティストとしての道が拓けた年に描き始めた作品だ。

ペロタン東京での個展は、5月に予定される香港での大規模展覧会を前に「日本でもやってみないか?」と実現したのだという。彼が日本に訪れるのも今回が初めてで、日本で一番やってみたいことを尋ねると「ポッキーが食べたいな」と笑顔を見せた。ワークウエアが好きで制服のように着ているといい、インタビュー当日もいつも着ているチョーコートに、Blockheadの刺繍入りキャップを被って現れ、「いつか自分の制服となるワークジャケットをデザインしてみたい」とちょっとした野望も明かしてくれた。

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幼い頃について尋ねると、「ある時点まではハッピーな子ども時代でしたが、家族の問題が起き心配だったこともあり、社会に馴染めないような時期がありました。『だから』ではないが、絵を描くということで別世界に行けるような気がして没頭していました」と振り返る。物心がつき、画家としての活動を続けながら米国内を転々としていたマルティネズが定住を決めたのは2001年。ブルックリンは、家族のルーツとなる場所だったという。「自分の実際のキャラクターと社会の中におけるキャラクターは違う。社会に存在することで生じる日々の摩擦やそこから生まれるあらゆる感情は、アトリエで作品と対話することでほぼ消化できている。ある意味、僕のパーソナリティーはそれによって保たれているように思います」と話す彼にとって、アトリエ選びは最重要事項。「今のアトリエは実は12年前に拠点にしたことのあるエリアで、改めて満足できる空間が確保できたので戻ってくることができた。もともとは大きな製作工場で、天井は約7メートルある。ゆっくりとした時間を過ごせる快適な場所なんです」。そう語るいかにもなアトリエは、彼の作風の根源となる恣意的な素材と題材の選択を可能にしている。

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偶然性を持ち味とする彼の作品は、キャンバスに重ねられた色や筆の痕跡を意識せずに、一度手にとった絵の具を感情のままにキャンバスに嬲り乗せていくことで仕上がる。小さい頃から父親と絵の具に親しんだという彼にとって絵の具は身近にあった「道具」であり、大人になるにつれその道具の幅は増え、今では絵の具だけではなくスプレーペイントやシルクスクリーンといった技法を取り入れる他、ときにはガムの包み紙やウェットティッシュなども用いるという。そういった遊び心のあるアプローチにより彼は、唯一無二の動的な作品を仕上げていく。2005年には目の大きなキャラクター達を描いた具象画で一気に脚光を浴びた彼だが、2013年頃からは抽象画へとシフトし、自身の可能性を追求。美術館に収められている作品も多く、現在は日本での個展だけではなく、ニューヨークのBronx Museum of the Artsでも個展「White Outs」を開催中だ。

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アートについて「様々な視点から物事を見ることができるということ、オープンな視点が存在するということを提示できるもの」と定義する彼が日本で打ち出すブロックヘッドは、ブレイクスルーとなった年に産んだ名刺代わりのような作品だ。「僕のフィリップ・ガストンへの熱狂。特に彼のブロック積み作品に対する、直接的な反応でもある。一見、トーテンポールのようだと言われることもあります」と最初に描いた2005年以降、近年でも度々モチーフとして登場させている。会場にはペインティング作品に加えて、小さめのドローイング作品も多数並び、その多くは開催前に売り手がつく人気だ。自身の作品を含め、アートへの関心が世界的に高まっていることについて「今急速に発達するテクノロジーが手に負えないことへの反動でしょう。ある意味、人間らしさへの回帰としてアートがあるのではないか」と分析するマルティネズ。アトリエで様々な感情を打つけるように作り上げるより人間らしさが内包されているのかもしれない。

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 写真全て© Eddie Martinez; Courtesy of the artist, Perrotin, and Mitchell-Innes & Nash, New York. Photo: Kei Okano

 ■Blockhead Stacks
会期:2018年12月20日〜2019年1月23日

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