Patek 3970
さて今回は 5970の記事 に引き続き、その前の世代のパーペチュアルクロノ 3970について まとめてみようと思います。
Ref.3970は1986年から2004年まで19年間に渡り合計3,600本(他にも諸説あり)ほどが生産されたと言われています。5970の2,800本 と比較すると勿論多いですが、生産期間が3倍近あった割には少なく やはり年産でいうと5970の方が多かった感じですね。モデル的には大きく4世代に分かれており、下記画像の通り1&2世代は長方形のインデックス、針は5004のようなリーフ針が大きな特徴。3&4世代からは 砲弾型インデックス+ストレート針に変更され最終形に。また途中から派生モデル5004がスタートしたのも大きな特徴です。
Ref.3970
① 19年間と異例に長い生産期間 (1986-2004年)
② 4メタル全体で 約3,600-4,000本前後 生産されたと推定
③ 1st世代が100本と最も数が少ない
④YG/RG は白文字盤、3rd からWG/PTは黒も選べた
⑤PT に関しては黒文字盤に2種 (スティックとダイア) あり
⑥生産開始から10年後の1996年に 派生モデル5004が発表
⑦ 3970/5004 がカタログで共存したのは実は僅か 9年間のみ
⑧多くのスペシャル文字盤が存在するが Tiffanyはかなり希少
⑨2004年 国内最終定価は 3970G 943万円 / 3970P 1,079万円
⑩5970より4mm 小さい36mmケースによる凝縮感が魅力
左から1/2/3/4thモデル。全体の印象に大きな変化はないが ディティールは異なる。
旧型2499 との比較
1986年に 3970へと世代交代し ケース経は 37.5 →36mm へと小さくなりましたが デザインはほぼ忠実に継承している事がわかります。各パーツの配置とディティールは同じですので、サイズ感と針のデザイン変更が最も大きく印象を変えている要素。2499はクラシックな針が特徴的でしたので、当時としてはモダンでシンプルに生まれ変わったと受け入れられたのでしょう。また時代的に、2499 の頃はこのような高価な時計を購入する人は 本当に世界で一握りでした。3970の時代には こういう時計を購入して楽しむ層が かなり拡大したので、社会的にも 2499とは別の存在と言えるでしょう。それでも現代と比べると…1990年前後に1,000万円を時計に出せる人は多くは無かったでしょうね。
ブラック文字盤について
生産中止になって以降に 3970の人気を不動のものとしたのはやはりブラック文字盤の存在が大きいです。3rdでブラック文字盤をWGとPTのケースにのみ解禁。ブラック文字盤にはインデックスがノーマルスティックとダイアモンドと 2種類あり、WGはスティックのみ。そしてプラチナケースの時だけダイア文字盤 も選択可能とし、価格はダイアモンドの方をほんの僅かだけ高価に設定。当時は「ダイア文字盤=プラチナの特権」というイメージでしたから、当然プラチナを買う顧客の大半が ダイア文字盤を選択したため、結果的に3970Pはスティックの方が希少という皮肉な状況となりました。ただし現在の価格差はそれほどでもなく、スティックが少し高いと言ったところでしょう。論理的にはWGの黒は全てスティック、PTの黒は殆どがダイアというのが実情です。
ホワイトムーンについて
またムーンフェイスの小窓から見えるディスクのムーンは 通常は鏡面シルバー仕上なのですが、1998-2000 年頃の特定の生産ロットだけホワイト仕上げになっており 一部ではホワイトムーンと呼ばれ人気があります。ただしオーバーホールでディスクが交換されると鏡面シルバーの通常仕様に交換されてしまいますが。また1992-96年 頃までの比較的初期の黒文字盤のムーンはオークションの個体を確認するとほぼ全てがゴールド色になっている。これは旧世代でYGケース用に作られていたムーンディスクを使ったか、元はシルバー色だったのが経年変化でゴールドに変色したか どちらかだと思われます。 2000年以降の個体は鏡面シルバーのままの状態のものが殆どです。
コンディションについて
3970は製造から20-40年経っているので、そろそろコンディションが重要なモデルになりつつあります。黒文字盤はまだ30年以内のものが多く、手巻きデイトナと比較すると文字盤の劣化は少ないですが、重要なのはケースシェイプとラグのエッジ。オーバーホール時などにケース研磨を受けている個体はエッジが丸く(いわゆるDull)になってきているので注意が必要です。今後その辺りが大きく価格に反映されてくるでしょう。
マーケットプライスについて
3970が現行モデルの間は 最後期の2004年前後においても 中古が定価より安く買えた状態でした。生産終了後に 少しずつ値段が上がり 2010年頃にプラチナ黒で国内で1800万くらいに高騰。その後パテのコンプリケーション全体が不人気となるにつれ、値を下げ2015年頃にはプラチナで1,000万前後まで低迷し、今思えばその辺りがボトムでした。セカンダリではノーチラスより安く買えた瞬間もありましたね。その後 徐々に戻して最近ではようやくプラチナ黒 で 2500-2800万前後まで復活してきた状況です。
スペシャル文字盤について
Ref.3970に関してもかなりの種類のスペシャルオーダー文字盤が作られています。その一部の有名なものを紹介しましょう。
①2015年 ロンドンのサーチ・ギャラリーでのエキシビションを記念し 3970をスペシャル文字盤で限定でPTとRGで 5本ずつ 復活生産(3970EP-46 / 3970ER-28)。この時点で 3970は製造中止となって10年以上経っていたので かなり異例な出来事でした。文字盤はブラックで、ブレゲ数字の12 /ドットマーカー /ミニッツサークル追加でかなりの凝縮感。さらに3針が5004用リーフに変更。一般的に「LONDON Edition」と呼ばれています。
③ 3970 Breguet。文字盤にブレゲ数字が配置し長短針までも “ブレゲ針” に変更されたセット。エリック・クラプトンやディズニーの社長ほか それぞれの優良顧客のために 数本生産したことが 確認されている。面白いのは04のアラビックと同じ場所に数字が配置されるわけだからベースに5004のアラビア文字盤をそのままベースに使えば良さそうなものだが、そうはせずに わざわざノーマル文字盤をベース(インダイアルのデザインを見れば明らか) に使用しているのが興味深いですね。通常この場合は針はストレートになるところが、このモデルはブレゲ針を使用。
④3970J Golden Dial:初期の3970で作られた 金色の文字盤。初期シリーズでのこういうダイアルは非常に珍しかったようです。インダイアル内部の色が、他の部分と微妙に異なるのも 初期モデルの特徴です。
⑤ 3970R ブロンズブラウン文字盤の特別仕様。デザインはロンドンエディションにも起用されたものですが、実はダブル・ドット・マーカー仕様となり(アワーマーカーはゴールドの球体で、ミニッツスケール上に追加で丸い夜光マーカーが配されている) 針は3990などに使用される夜光付プロペラ針 + ブレス仕様。 6時位置に「MSO」のモノグラムがプリント。このMSOは – Michael Steven Ovitz というコレクターのために特注文字盤の5004を作った時がその始まりで、この時計もそのシリーズかもしれませんね。
⑥ 3970 Tiffany:3970のダブルネームは非常に少ないが現在までで数本は確認されているだけです。おそらく全部で5本あるかないか、というところではないでしょうか。TIFFANYの個体数 に関しては 5970の方が多いと思われます。
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- Patek Philippe