「モンクレール ジーニアス」は第2章へ 2019年春夏コレクションの全貌
「MONCLER(モンクレール)」が個性豊かなクリエイターとの継続的なコラボレーションにより複数のコレクションを同時に制作するプロジェクト「MONCLER GENIUS(モンクレール ジーニアス)」。その第2章となる2019年春夏コレクションが、ミラノ・ファッション・ウィークで披露された。今年2月、8つのコレクションを一斉発表して始動した同プロジェクトが目指しているのは、クリエイターのビジョンを形にしたプロダクトを軸にブランドの独創性と多様性を探求すること。現在、異なる才能が手掛けた新しいコレクションを順次リリースしている他、それらの世界観を余すことなく表現した巨大ポップアップストアを東京やニューヨークにオープンするなどして、大きな話題を集めている。
「モンクレール ジーニアス」として初の春夏となる今シーズンは、「FRAGMENT(フラグメント)」の藤原ヒロシ、「NOIR KEI NINOMIYA(ノワール ケイ ニノミヤ)」の二宮啓、ロンドンを拠点に自身のブランドを手掛けるCraig Green(クレイグ・グリーン)とSimone Rocha(シモーネ・ロシャ)、そして、創業年に由来する「2 モンクレール 1952」のデザインチームの計5組が秋冬から継続してコレクションを制作した。ただ今回は、ファッション・ウィーク初日に行われた大規模なプレゼンテーションでは、5つに分かれたスペースで各コレクションのムードや世界観を表現した映像のみを公開。翌日、同じ場所で開かれた展示会で実際のアイテムを披露するというユニークな形式をとった。2日間を通して明らかになったその全貌をレポートする。
Photo_Shoichi Kajino & Moncler | Edit&Text_Jun Yabuno
2 MONCLER 1952
プレゼンテーションで部屋の壁全面に映し出された映像は、Marco Adamo Graziosi + Maria Host-Ivessich(マルコ・アダモ・グラツィオジ+マリア・ホスト・イヴェジッヒ)の監修によるもの。コレクションのアウトフィットやディテールをコラージュし、カラフルでグラフィカルな世界観を表現した。そんな「2 モンクレール 1952」では、ブランドのクラシックな要素を現代的に再解釈したメンズ&ウィメンズのアイテムを提案している。メンズは、拡大したブランドのロゴパッチやタイポグラフィ、スターやハートモチーフなどをちりばめたポップなデザインが特徴。薄手のダウンジャケットをはじめ、ナイロンジャケットやウィンドブレーカーとパンツやショーツのセットアップ、セーター、スウェットシャツなどをそろえる。
一方、ウィメンズは艶のあるナイロンラケやクレープデシンなどテクニカル素材を活用。スポーティーなパーカーやブルゾンをボリュームやシルエットで遊び、都会的なアイテムに仕上げた。レトロなスカーフプリントや「LOVE」のタイポグラフィも印象的。
4 MONCLER SIMONE ROCHA
巨大なスクリーンの前に水を張ったセットを用意した「4 モンクレール シモーネ・ロシャ」が映像の中で描いたのは、英国庭園のような広々とした自然の中を駆け回ったり、ガーデニングを楽しんだりする女の子たちの姿。シモーネ自身と若手写真家のTyler Mitchell(タイラー・ミッチェル)のディレクションの下、イギリスのカントリーサイドで撮り下ろしたという。コレクションは、自身のブランドにも通じるパフスリーブやチュール、フリル、フラワーモチーフなどを盛り込んだロマンティックでガーリーなデザインのドレスやコート、ブルゾン、スカートが中心。そこにレースをあしらったラバーグローブやブーツを合わせ、ガーデニングの世界を表現している。また、ナイロンやPVCなど普段はあまり使わないようなスポーティーな素材を取り入れているのは、「モンクレール」との協業ならでは。
5 MONCLER CRAIG GREEN
「モンクレール ジーニアス」の中で最もコンセプチュアルなコレクションと言えるのは、「5 モンクレール クレイグ・グリーン」だ。今シーズンはテントと凧からインスピレーションを得て、“プロテクション(防御)”という概念の探求を続けている。メインとなるアイテムは、赤や緑、青、黄色などの鮮やかな色使いとハリのある生地で仕立てた巨大なフォルムのフード付きケープ。Dan Tobin Smith(ダン・トビン・スミス)が監督した映像の中では、アイテムがからくりのようなアナログな仕掛けと一体化して跳ねるように動く様子が捉えられている。それだけを見るとリアリティーに欠けるようにも感じるが、コレクションには、カラフルな色使いを取り入れたナイロンジャケットやパーカー、Tシャツといったウエアラブルなアイテムもラインアップする。
6 MONCLER NOIR KEI NINOMIYA
デザイナーの二宮啓がサウンドプロデューサーの黒瀧節也と共にディレクションした「6 モンクレール ノワール ケイ ニノミヤ」の映像は、手仕事を生かしたコレクションをあえて3Dのバーチャルガーメントモデルで再現した。一見するとオールブラックでまとめたコレクションは控えめ。しかし、近くに寄ると今回もクチュールのように非常に手が込んでいるのが分かる。例えば、「モンクレール」のロゴパッチ5枚をリベットで留めて作った花びらは、小さなメタルリングでつなげてフレアドレスやジャケットに。ロープ状のダウンを編み込んだり、小さなダウンパックを鱗のように重ねて並べたり、ダウン入りの生地に穴を開けたりという独創的なアプローチも健在だ。よりシンプルなアイテムは、メタルリングやチェーンをデザインのポイントにしている。
7 MONCLER FRAGMENT HIROSHI FUJIWARA
「7 モンクレール フラグメント ヒロシ・フジワラ」の映像は、ぎこちないながらも躍動感あるハンドドローイングのアニメーションで、荒野を馬に乗って駆ける様子などの冒険的な要素を表現。ポーランド出身のアニメーター、Michal Socha(ミシャル・ソーシャ)がディレクターを務めた。会場を訪れた藤原ヒロシは、「映画の冒頭に流れるスコットフリー・プロダクションという製作会社のオープニングムービーが好きで、そういった雰囲気のアニメーションとコレクションをうまく混ぜ合わせたかった。それをディレクターに伝え、後は任せて作ってもらった。なので、映像の中のモチーフは全てディレクターのアイデア。結果、非常にいいものが仕上がった」とコメント。「コラボのいいところは、映像の中でサッカーを使ったり、スタイリングにハイソックスを履かせたりと、僕だったらやらないようなことを人に任せることによって形にできる新鮮さや驚きだ」と今回の取り組みを振り返る。
コレクションのテーマは、音楽や旅とのつながりを感じさせる“ワールドツアー”。「『モンクレール ジーニアス』の中で自分に求められている役割は、ポップで誰もが着やすいアイテムを作ることだと思う。今回もそこを意識した」と藤原自身が語るように、スローガンやロゴをのせたアイキャッチなアイテムが豊富にそろう。ラインアップは、レインジャケットやパーカー、薄手のダウンジャケット、チェックブレザー、スタジアムジャンパー、スカジャン、フィールドジャケット、デニムジャケットとアウターが充実。その他、Tシャツ、フーディー、チェックシャツ、トラックパンツ、ショーツ、トートバッグ、バックパック、スニーカーなども提案する。中でも藤原が気に入っているのは、「Moncler Fragment」を「Moxxxer Fxxxx」とデザインした「パット見、“マザーファッカー”に見えるアイテム」だという。すでに6月に発売され好評を博している18年秋冬コレクション同様に、今回発表された春夏コレクションも人気を集めそうだ。
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