新星アイス「NEW」ヒットを生んだ、スイーツデザイナー香月友紀とは何者か?
2021年、彗星のごとく現れ話題となったアイスクリームブランド「NEW」。スイーツデザイナー・香月友紀がスタートした新ブランドだ。福岡で焼き立てのワインとスイーツのマリアージュを愉しめる「WINE & SWEETS tsumons(以下 tsumons)」のオーナーであり、拠点福岡を中心に世界にまで活動を広げている香月とは何者なのか。
■新星アイスクリーム「NEW」ができるまで
-「NEW」の構想はいつから?
去年の春頃ですね。鹿児島の企業さんから搾りたての牛乳のブランドをというお話をいただいて、私も「tsumons」とは別のスタイルで新たなブランドを作りたいという思いもあったのでアイスクリームブランドを立ち上げることにしました。コンセプトは「FROM FRESH MILK」。あえて打ち出すことではないですが、搾りたての牛乳やとりたての素材にこだわっているのと、アイスクリームって1個同じ味を食べ続けると飽きてしまうと思っていて。食べ続けて飽きないように風味や食感を工夫しています。
-ロゴは「PLACERWORKSHOP」オーナー・内田洋一郎さんが担当されているんですね。
「tsumons」のロゴをきっかけに、新しくブランドを立ち上げる時はいつもお願いしているんです。もともと、福岡のクリエイターが集まるWebメディアをきっかけに出会って、それ以来の仲です。私は文字フェチというか、様々なアートを観ても写真や絵画ではなく、文字が入ったものやそのフォントに惹かれることが多くて。内田さんとお仕事するようになって、文字のイメージからスイーツを作るという作業をしていて、今回も「NEW」という文字から作りました。それから晴れ舞台に立つ時は、このロゴを刺繍した制服を着るようにしています。私はビビリで小心者なので、これを背負って立つことで自信を持てるというか(笑)、背中を押してくれるんですよ。
-シグネチャーカラーはピンク。
バレンタインの季節にデビューだったのでピンクを選びました。パリのおしゃれなムッシュが、スーツスタイルにシャツやネクタイでピンクを取り入れているような、キュートなイメージでした。白黒の中にピンクが入ることで少しだけそのユニークさが際立つなんじゃないかな。そして、ホワイトデーにむけて新たに追加したアイテムでは、ホワイト感もだしつつ、本来意図していたブラックへ変化していく雰囲気もたのしんでいただけたらと思ってます。
-アイスクリームブランドを作るのは初めて。
溶けてしまう儚げなアイスクリームには、他にはないハッピーな気持ちになれる何かがあるよねと内田さんと話していて。そこから、「MIDNIGHT GUILTY BUT HAPPINESS」というコピーを描いてもらいました。思い描いたのは、”冷凍庫にはパイントサイズのアイスが入っていて、今日もそれを片手にベッドで映画を見ながら食べて寝よう”というシーン。よくアメリカ映画にあるようなシーンですが、罪悪感があるけど背徳感も交わってなんだか一番幸せみたいな。「真夜中にご褒美アイスクリームを」というカルチャーが日本に浸透するきっかけになれば嬉しいなという思いも込めています(笑)。
-フレーバーはどうやって考えるんですか?
言葉から韻を踏んでいくようなイメージで味を組み立てていくこともあります。私はラッパーのACTION BRONSONが好きなんですが、カカオニブを使った「SPICE NIBS」というフレーバーに名前をつける際に、たくさん案がある中「SPICE NIBS」が「STIVE JOBS」と似てない?と思い、この名前に。「POP BY JUN」は、POPという言葉の響きで、ポップコーンを弾かせるところからはじめました。香ばしさが口に残るよう更に深煎りでキャラメリゼし、それに、ストリートのアトモスフィアでバタースカッチを組み合わせました。「CHATEAU JUN」は、まず山ソーヴィニヨンという赤ワインをどのように表現するかを考えました。少し酸味のあるチョコのなかで、力強い野性味のある赤ワインをほんのりとエレガントに重ねています。
■スイーツデザイナー香月友紀ができるまで
-tsumonsをオープンさせるまでは何をしてきたのですか?
大学在学中に色々なアルバイトを経験しましたが、その中でもお花が好き過ぎてフラワーアレンジメントを続けていました。その道を極めていくことも考えていたのですが、兄から「空想癖があるから運転免許は取らない方がいい」と言われてしまい、配達ができないという問題が発生してしまい(笑)。それでも、何かモノづくりを続けたくて、お菓子作りの道に飛び込んでみることにしたんです。福岡・薬院のチーズケーキとパスタの店「Petit Jour(プティジュール)」で修行し、ソムリエの資格をとる事ができました。資格の勉強は、ひたすらに嗅ぎ分けて訓練して乗り越えて。幼いころからなんでもクンクンしていたのが役立ったのかも(笑)。そして、7年前に「tsumons」をオープンさせました。
-tsumonsのこだわりは「oven fresh(焼きたて)」。1人1人のために焼き上げるスタイル。
私にとって「tsumons」は舞台、劇場みたいなもの。空間のおかげもあって、ものすごくクールな人がやってると思われているみたいですけど、実際は落語家のようだと言われます(笑)。カウンタースタイルなので、お客さまが笑ってくださると、「もっと面白いことしちゃおう」と思ってしまいます。
-エンターテイメントのように、楽しい時間が過ごせそうですね。
最近気づいたんですが、誰かに笑ってもらうのが好きなんでしょうね。デンマークの「noma」に行ったことがあって、お料理の斬新さはもちろんですが、それ以上にスタッフの方のおもてなしに感動して。「だから辺鄙な場所なのに世界中から人が訪れるんだな」と納得したんです。同時に私も同じように人に喜んでもらいたいし、場所がどこであれ行きたいと思われるお店にしたいと思いました。テイクアウトなど昨年よりずっと目指していたスタイルに変更したんです。焼きたてのスフレをメインに甘さと塩味を組み合わせたデセールをコース仕立てで提供するスタイルに。そこにワインやスピリッツをペアリングしていくときの臨場感をお客さまにも味わっていただけたら嬉しいなと思っています。
-スイーツデザイナーという肩書はいつから?
「tsumons 」
-スイーツデザイナーとしての活動は海外でも。印象的な思い出はありますか?
イベントが開催される国や会場のイメージに合わせて菓子を“ライブ”で届ける「36」というプロジェクトをやらせていただいているんですが、2019年にNYで実施した時のことが今でも忘れられなくて。現地で材料を調達することもあって、会場で「今朝、近くのファーマーズマーケットで買ってきたアップルジュースとDr.Pepperを混ぜました」と説明を始めると、オーディエンスが爆発的に盛り上がって。あのライブ感は、自分が生きていると実感できる瞬間でした。あれからずっと、いつの日かまた海外でライブしたいと思っていて(笑)、でもそれで実感したのは、自分の言葉で説明することの重要性。甘い食べ物を生み出すということだけではなく、合わせるお酒や食べる空間、そしてそこで繰り広げられるパフォーマンスも合わせて、スイートなひとときをデザインしていくことだとも思うんです。だから言語の壁があったとしても、できるだけ自分の言
「36」のオフィシャルサイトより
-「NEW」も含め今後、どんな夢を描いていますか?
もちろん私自身の目標はACTION BRONSONとのコラボです(笑)。正直に言うと、今後はわからないですが、今よく「風の時代」と聞くじゃないですか?これは、きっと当たってるなって思うんです(笑)。私は天秤座なので風の星座にカテゴライズされるのですが、そういう時代が訪れてより自由を感じられるようになっていて生きやすいなと思っています。「tsumons」は自分の居場所であり、最後に骨を埋める場所だと思っているので、これからも福岡が拠点なのは変わらないと思いますが、「NEW」というブランドがスタートして、私らしい仕事ができているという実感があります。こうしてポップアップの最高峰でやらせてもらえていることも嬉しいですし、アイスクリームバーや、果物やお酒を組み合わせてライブでつくるアイスを提供してみたいといった構想はいろいろ。でも何処に行っても、必死に誰かを喜ばせたいですし、その顔を目の前で見たい。そう思う気持ちはずっと変わらないですね。
■NEW
会期:2月19日(金)〜3月14日(日)
会場:POP BY JUN
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
営業時間:11:00-20:00(不定休)
Online Store:「POP UP JUN」公式オンラインストア
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