2021.06.03
Crypto Punks
現代アートの世界にNFTの大きなムーブメントが訪れていますが、その中でモナリザ的なポジション(正確にはウォーホルと言うべきですが)を築いたのがクリプトパンクスでしょう。このユニークなピクセル画とパンクスというネーミングの妙もありますが、なんと言っても「世界最古のNFT」というポジションを獲得したのは大きいですね。これは絶対に後から 誰にも追いつけない 既成事実ですから。
「Crypto Punks」とは LavaLabs が2017年にリリースした10,000体のパンクスのキャラクターのNFT作品。10,000体が無料で配布され、当時はイーサリアム(ETH) のウォレットを持ってる人なら誰でも受け取ることが出来ました。24×24ピクセルで 表現された 10,000体のパンクス達はに同じ顔は存在せず、全員がイーサリアムのブロックチェーン上管理されており 現在では オーナーがそれぞれのパンクスに存在します。
10,000体 のパンクスのうち、エイリアンが9体、エイプ族が24体、ゾンビが88体 などのレアキャラが存在し、全て公式ページで確認可能。レアなパンクスは驚くほどの高値で取引されており、1体での過去最高額は4,200ETH(当時のレートで 8億2,000万円=現在レートだと約13億円)で 9体しかないエイリアンのひとつでした。先日のクリスティーズでも 9体セット(うち1がエイリアン)で17億円で落札。やはりエイリアンとエイプが高いようですね。
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面白いのは LavaLrabs の公式サイトで、現在オーナーが売りに出しているパンクスをいつでも確認できるところ。現時点で最安値は450万円くらいからあるようです。メタマスクなどのウォレットをブラウザにインストールした状態で、サイトを閲覧すれば購入ボタンが出現し、イーサリアム支払いでいつでも購入可能。また販売されてないパンクスにもこちらが指値(希望価格をオファー)するのも可能。それぞれのパンクスのページを見ると、NFTだから当然ですが、今までの所有者の経緯やその時々の価格も全てブロックチェーンに記録されているためいつでも確認できます。
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もちろん現段階ではやはり投機的に購入している人が多い(これは全てのNFTが同じ状況です)のですが、例えば 2017年7月にエイリアンのパンクス(Punk #2890)を1万ドルで購入した投資家は、2020年に76万ドルで売却。実に3年間で75倍のリターンという訳です。かつての価値観からすれば、「こんなものが投資対象に?」という感じですが、まさにこれが今の空気感なのでしょう。事実多くのパンクスが10万ドル以上で取引されています。例えば暗号通貨に否定的な意見があったとしても、もはや流れ出した川は止められないのが、世の常。NFTも結局はある程度、行くとこまでは行くでしょうね。
もちろんこういったNFTを買ったところで、部屋に飾れる訳でもないですし 一体どう楽しめば良いのかと感じる人が現時点では大半かもしれません。ですが 従来のアートでも所有したまま倉庫にあるなら、全く同じ話ですし、今後こう言ったものを買うのが当たり前という時代がくれば、違和感はなくなるのかもしれませんね。そういった意味で言うなら、時計や従来のアート作品のようなコンディションの劣化がなく、盗まれる心配もなく(ハッキングの可能性はゼロではありませんが)、ブロックチェーン上で所有権の移転も安心というまさに暗号通貨(=Crypto)時代の新しい資産の形とも言えるのかもしれません。
それよりも、NFT が本当の意味で超一流のアートになれるか否かは、 結局のところ 所有者が「資産的な意味以外での 所有価値や満足度を得られるかどうか」と言うところでしょうね。長い歴史を勝ち抜いてきたリアルアートにはそれがありますが、NFTがそこを築いていけるかは、まさにこれからにかかってくると思います。
クリプトパンクスのような「世界最古のNFT」と言う称号があれば 購入者の 一定の満足感は担保されるでしょう。しかしそういった称号を持たない 他のNFTアートにとっては 買った人が長きにわたって満足できるのかどうか、そこのところが最後は問われるんじゃないか、と思います。
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